the の人称代名詞的用法って?


想いの強さが表現を変える

She kissed his hand.
関心は彼の手

She kissed him on the hand.
関心は彼自身。そしてキスしたのは彼の手

さて、on the hand ですが、
on his hand ではダメでしょうか。

この部分、「全体と部分」をキーワードに説明をするものがあります。
しかし、この説明はなぜ、the が使われるかに直接答えていません。

the が使われるのは、次に来る名詞が話者と聞く人にとって了解されるからです。定冠詞だから具体的にわかる、という場合です。
その為はじめて出てくる単語には、通常使いにくいのですが him にキスしたあとに出る言葉が「手」ですから想像しやすい。=定まりやすい。
結局同じ単語が繰り返される場合でなくとも、前に出た単語から容易に具体例が想像しやすい場合にも the が使われる。
「全体と部分」の場合も、これに該当するのです。

文法書でも、the の部分には当然所有形容詞(my や her)がくるだろうと予想される場合theを使うことがある、と説明しています。
また、この使い方は、身体だけでなく、髪とか衣類とか体についているものまで延長されています。
Miss Pringle pulled Clarinda by the hair/by the sleeve.
袖まで拡げると「全体と部分」のイメージが拡大しています。

(参照ロングマン アレクサンダー英文法 丸善株式会社)

実際にグーグルで検索をかけてみると、このような場合に、
on his hand という英語は使われています。

on his hand も英語の文法的には正しい、ということになります。

というより、
この場合の the は、定冠詞the の人称代名詞的用法(所有格にかわるthe)といい、
the の 特別な用法と説明されます。(the の人称代名詞的用法があるから、この文は正しいと説明するなら、その説明は誤りです。問題の本質は the がなぜ本来の用法でない人称代名詞的に使われるのか?です。)
人称代名詞 his こそ英語の本来の用法、といえそうです。
(”英語の”というのは近接兄弟語フランス語やドイツ語などを除くためです。)

次のような場合には、相手との了承がなく、
the は、使えません。

I've hurt my wrist.
私は手首を痛めた。(my でなければ誰の手首がわかりません。)

She wiped the sweat off her face.
彼女は額の汗をふいた。(her でなければ、誰の顔を拭いたかわかりません。)

これらに比べ頭書の、
She kissed him on the hand.

the が、his でなくとも聞いている人には、「誰の手」かわかります。
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また、余談ですが
「首が痛い。」
I have a pain in the neck.
は使えません。
I have a pain in my neck.といいます。
なぜなら、
pain in the neck 自体が、
「厄介なのも、厄介なこと」という熟語になってます。
最初の文は、
「私には、厄介ごとがある。」となります。
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閑話休題

以上、the の人称代名詞用法だの、所有形容詞が予想される場合に「全体と部分」に関わる場合は、特別に the を使うのだ、という説明をしてきました。

しかし、この the の使い方こそ通常の使用方法に過ぎない、と説明するもののあります。

「発想転換の英文法」鈴木寛次氏:丸善ライブラリーです。




まず、
I have a book in my hand.
私は手に本を持っています。

見慣れた文です。(これが英語の慣用です。)

ここで my を使うのは重複表現であり、
「周囲」の状況からわかる「手」であるから、

I have a book in the hand.
でなくてはならないはずだ、といいます。

ここで、オランダ語、ドイツ語、フランス語で同様の文を例に出し、
他の言語は、すべて in the hand に相当する句を用いている。

英語だけが独自の発達をとげた、といいます。

そして、上記の慣用からすれば、
(上記の慣用:I have a book in my hand.)

たとえば、
I have struck him on the face.
は、
I have struck him on his face.
としなければならないはずだ、といいます。

しかし、実際は
I have struck him on the face.
が英語の正用だとし、絶対に
I have struck him on his face.としません。

著者は、この件で英語はいかなる詭弁を弄しているかを探ります。
江川泰一郎「英文法解説」は、
定冠詞 the を使うのは慣用的な表現であることを示しているだけのようです。(全体ー一部論のようです)

井上義昌編「英米語用語辞典」は、
この場合の the は、動作の及ぶ部分を表す語法で英語特有の表現で、定冠詞 the を用いることに注意を要する。(=注意しなければならない=通常の語法ではないという理解だと思います)

しかし、

鈴木寛次氏は、

I have struck him on the face.
での the が重複表現にならず、理論上正しいのであり

日常普通に用いられている
I have a book in my hand.
が、他の関連言語に照らして特殊な用法だとしています。

ここでは、the の用法理解に各説があることを確認できたことを収穫とします。

グーグルで使用例をいろいろ確認してみる事をおすすめして終わります。




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